脳の解剖・生理
頭部の断面を見ると、外側から頭皮、頭蓋骨、髄膜があり、その内側に脳があります。脳を保護している髄膜は3層に分かれており、外側から硬膜、くも膜、軟膜があり、軟膜に脳の表面がくっついています。硬膜とくも膜の間を硬膜下腔といい、くも膜と軟膜の間をくも膜下腔といいます。くも膜下腔は脳脊髄液で満たされ、脳はその髄液のなかに浮かぶように存在し、衝撃や振動などの外部環境から守られています。

病態
くも膜下出血は、くも膜下腔で出血が起きた状態をいいます。くも膜下出血の原因の7~8割は脳動脈瘤の破裂です。その他にも、脳腫瘍、頭部外傷、脳動静脈奇形、もやもや病などの原因があります。脳動脈瘤は、血管の分岐部にできることが多く、自然に消失することはありません。好発部位は、前交通動脈、中大脳動脈分岐部、内頚動脈―後交通動脈分岐部、脳底動脈先端部です。
症状
通常、脳動脈瘤があるだけでは無症状ですが、動脈瘤は突然破裂して出血を起こすことがあります。いったん破裂するとくも膜下に出血し、さらに再破裂をきたすと救命できなくなることが多いため、出血源の脳動脈瘤を迅速に特定し治療します。
くも膜下出血の症状は、これまでに体験したことのないような激しい頭痛が突然起こります。嘔気・嘔吐、髄膜刺激症状(項部硬直)も挙げられます。さらに、出血により生じる脳の局所症状として、麻痺や言語障害、意識障害が現れる場合があります。出血量が多く脳圧が高くなった場合には、昏睡状態に陥ります。