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事例あり!小児看護過程の書き方【看護問題・看護計画編】~優先順位のつけ方と根拠~

看護実習
公開日

小児看護で重要なことは、子どもとその家族全体をとらえたケアを提供することです。子どもとその家族を包括的に支援するためには、子どもの成長発達段階を十分に理解し、総合的な視点からアセスメントを行い、看護計画を立案しなくてはいけません。
今回は急性胃腸炎で入院となった1歳女児の看護過程において、看護計画を書く時のポイントを解説します。
小児看護における家族を含めた看護と成長発達段階の理解を深め、適切なケアを実践できるようにしましょう。

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看護問題の優先順位のつけ方とその根拠とは?

看護問題の見つけ方

小児看護における看護問題は、収集した情報をもとに以下のようなことから見出します。

  1. 子ども自身にとって苦痛となっていること
  2. 症状や疾病により、日常生活が妨げられていること
  3. 成長や発達を阻害していること
  4. 不適切な生活習慣や保健行動により健康問題を引き起こしていること、または予測されること
  5. 子どもの病気、入院が家族に悪響を及ぼしていること、または予測されること

小児看護では、子どもの病気や症状による苦痛とともに、それらが家族にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにし、子どもだけではなく家族に対しても援助を考えていく必要があります。

優先順位のつけ方

小児看護における看護問題の優先順位は、子どもの安全と成長の両立を目指した上で、一般的に子どもの生命の安全を脅かす問題や緊急性・重症度・長期影響の高さを考慮し設定します。
現在は顕在化していなくても、今後子どもや家族の健康や生活に及ぼす影響が大きいと考えられることも優先度は高くなります。

看護問題の具体例

アセスメント編の「実習でよく受け持つ事例」をもとに、看護問題の具体例を挙げていきます。

#1 発熱、下痢、嘔吐による脱水状態
#2 下痢に伴う陰部・肛門周囲の発赤の悪化
#3 転倒・転落の可能性
#4 入院と治療に伴うストレス状態
#5 入院や患児の状態変化による母親の不安

事例あり!小児看護過程の書き方【アセスメント編】~家族看護と成長発達段階の理解~

#1 発熱、下痢、嘔吐による脱水状態

脱水状態が改善し水分出納バランスが保たれ、Aちゃんの活気がみられることを目標に、バイタルサインや急性胃腸炎に伴う症状の観察、食事摂取状況や排泄状態を含めた水分出納バランスの評価が必要です。
Aちゃんの全身状態を観察する際は、発達段階に合わせて、活気や機嫌の状態を判断していく必要があります。

#2 下痢に伴う陰部・肛門周囲の発赤の悪化

陰部・肛門周囲の発赤が悪化せず、改善することを目標に、下痢の有無や程度、陰部・肛門周囲の皮膚状態、痛みの有無や程度を観察する必要があります。
陰部・肛門周囲の洗浄時は皮膚をこすらないよう、母親の手技を確認し、必要であれば指導をします。頻回な洗浄は皮膚のバリア機能を低下させる可能性があるため、皮膚状態を観察しながら適切なケアを実施していきます。

#3 転倒・転落の可能性

とくに乳幼児期では、成長発達段階において好奇心旺盛であり動きが活発になる一方で、安全管理に対する意識や判断力は未熟な状態であり転倒・転落リスクが高くなります。転倒・転落がなく安全に療養生活を送れることを目標に、ベッド柵の使用やベッドの高さを適切にする環境整備が重要です。
付き添いの母親に対しても、転倒・転落には十分注意するよう注意喚起し、部屋を離れる際は看護師を呼んでもらう指導が必要です。

#4 入院と治療に伴うストレス状態

Aちゃんが状態に合わせて機嫌よく過ごせることを目標に、身体的な観察とともに、睡眠状況・活動時の様子・言動・活気・機嫌を観察します。
Aちゃんの成長発達段階から分離不安の時期であり、母親と離れることはAちゃんにとってストレスであることを考慮する必要があります。Aちゃんの発する言葉の意味を家族とともに考え、理解し、全身状態と合わせて観察していきます。

#5 入院や患児の状態変化による母親の不安

母親が不安を表出できることを目標に、Aちゃんの全身状態の観察と合わせて、母親の食事・睡眠・休息の状況、Aちゃんの病状に対する理解度を観察していきます。

看護計画を書く時のポイント

患児の発達段階の特徴を踏まえたケア

小児看護において発達段階を考慮したケアの提供は、子どもの身体的・心理的・社会的な成長・発達支援において重要となります。
子どもが安心でき、治療の協力が得られることで病状の改善に繋がると期待できます。発達段階ごとのケアのポイントは以下の通りです。

乳児期

乳児は、病気という概念や治療、検査、処置の意味・必要性について理解はできません。痛みや不快感、違和感で「感じたこと」を理解し、泣く・ぐずる・眠りが浅い・母乳やミルクを飲まないといった身体的反応として感情を示します。
基本的信頼感の形成が重要な時期であり、親から離されることで不安や恐怖感を強く感じます。

看護者は、乳児の泣く・手足をバタバタ動かすといった何かを訴えようとする行為に意味を感じとり、理解は難しくても丁寧な言葉を発し、笑顔でコミュニケーションをはかることが重要です。
可能なかぎり親と一緒に過ごせるよう環境づくりに努め、親子の基本的信頼関係が保たれるように配慮しましょう。分離不安が余儀なくされる状況においても最小限になるよう配慮に努め、子どもの好きな歌や遊び、おもちゃの情報を得て関わっていくことが大切です。

幼児期前期

幼児期前期は、病気について正しく理解することはまだ難しい時期です。言葉能力が発達し、簡単な言葉であれば理解できますが、痛みの程度や病状を的確に自身で表現することは困難です。治療の必要性についても理解はできず、治療や処置に対する不安や恐怖心は非常に強く、激しく泣いたり、全身で抵抗したりします。

看護者は、子どもの訴えを理解し、乳児期と同様に可能なかぎり親子が一緒に過ごせるよう環境づくりに努めることが重要です。
病気や検査・処置の内容についてはぬいぐるみや絵本、ステートや絆創膏といった医療道具を用いたごっこ遊びを通して、わかりやすく説明することで少しずつ理解でき、その子なりの対処行動がとれるようになります。

幼児期後期

幼児期後期になるとさらに言語能力が発達し、病気や治療の必要性について子どものわかる言葉で丁寧に説明すると理解できるようになります。しかし、初めての経験や慣れない環境には、不安や恐怖を感じるため、強く抵抗します。

子どもの意思や反応を十分に受け止めながら、実施することを一つひとつわかりやすく伝えていくことが必要です。
治療や療養行動においては、可能なかぎり子どもが自分で選択、決定できる機会を増やし、子どものがんばりを支持することで、自信や積極性を獲得できます。

学童期

学童期になると、自分の経験の範囲内で論理的に物事を考えられるようになります。
バイキンが自分の身体の中に入ってきて病気を引き起こす因果関係を理解できます。
「いつまで家に帰れないの」と、病気による自分の生活への影響についても考えられるようにもなります。
治療の必要性については、子どもに理解できる言葉を用いて説明すると、具体的に理解することが可能です。

処置や治療に対して自分なりの対処行動がとれるようになりますが、我慢しすぎたり、激しく抵抗したり、その対処行動はさまざまです。自分の考えや思いを十分に表現することが難しい場合もあります。

看護者は、子どもの自立心を尊重し、子どもの意思を尊重しながらかかわることが大切です。
感情を抑制している可能性も考え、子どもの思いや意思を引き出すかかわりが重要です。

思春期

思春期は親から心理的自立をはかる時期ですが、病気に伴い自立と依存の間で葛藤し不安定になりやすいです。
仲間との帰属意識が強い時期でもあり、病気や療養行動によって仲間と異なるさびしさや孤立感を抱きやすくなります。

治療や処置については、説明を受ければ十分に理解できます。
病気に伴う苦痛や不快感だけでなく、日常生活への影響や進学、就職活動、結婚への影響を含めた将来や予後への不安を抱く場合が多いです。

看護者は、子どもの親に対する依存と自立のバランスが保たれるように互いの話を聞き、双方に働きかける必要があります。子どもの思いを受け止め、仲間との関係性やあり方に配慮しながら、適切な療養行動を維持できるように本人と一緒にその方法や手段を考えていくことが大切です。

患児の不安とストレス

入院生活を送る子どもは、痛みや恐怖心から常にストレスを受けている状況にあります。
成長発達段階による子どものストレス反応を理解し、どのような反応が表出されているか観察します。啼泣や抵抗、怒りの表現による反応は比較的わかりやすいですが、どのように表現したらよいのかわからない子どもも少なくないことを十分に理解し、判断することが大切です。

観察や援助をする際は親への説明だけでなく子どもとのコミュニケーションを大切にし、子どもが好きなおもちゃを使用したり、必要時は親の協力を得たりして子どもが安心できる環境をつくります。成長発達段階に応じた理解しやすい容易な言葉で伝え、子どもの反応を確認しながら観察や援助を行いましょう。

子どもは遊びや楽しみによってストレスを発散したり、好きなおもちゃを手にすることによって緊張を和らげたりします。子どもの年齢に合った遊びやレクリエーション活動を、病状に応じて可能な範囲で行うことも大切な看護です。

家族が抱える不安(家族看護)

少子化や核家族化の定着に伴い、子どもの入院という出来事に家族が直面すると、家族が抱える心配事や不安が増加したり、付き添いや面会といった新たな役割が発生したりするために、家族機能を維持することが難しく家族機能不全に陥るリスクが少なくありません。
そのため小児看護では、子どもとその家族の家族機能の維持と向上を目的とした家族ケアが必要になります。

長期間の入院や重篤な病気の場合、母親が付き添いをする場合が多く、身体的・精神的負担が大きくなります。母親は子どもの看護だけでなく、家庭や他の兄弟、仕事など多くの役割を担っていることも多く、母親の疲労やストレスへの配慮が必要です。
子どもの病状や治療内容について丁寧に説明し、母親の言動を確認しながら、母親が疑問や心配事を表出しやすい環境づくりを心がけましょう。母親の睡眠や食事状況で健康状態を観察し、サポート環境の調整についても母親と一緒に考える支援が必要です。

看護計画の具体例とポイント

#1 発熱、下痢、嘔吐による脱水状態 の看護計画

看護問題
発熱,下痢、嘔吐による脱水状態
目標
  1. 脱水状態が改善され、水分出納バランスが保たれ、Aちゃんの活気がみられる
  2. 発熱、下痢、嘔吐の症状が軽減し、食事摂取が可能となる
  3. 母親がAちゃんの状態に合わせた適切なケア方法を理解し実践できる
OP
  1. 意識レベル
  2. バイタルサイン(体温・心拍数・呼吸数・血圧・酸素飽和度)
  3. 皮膚、粘膜の乾燥状態の有無
  4. 尿量、尿回数、尿性状
  5. 涙の有無
  6. 大泉門の陥没の有無
  7. 体重減少の有無、程度
  8. 活気の有無、機嫌
  9. 末梢冷感の有無、チアノーゼの有無
  10. 経口摂取量
  11. 嘔吐の回数、性状
  12. 排便回数、性状
  13. 検査データ(電解質・血液ガス・尿比重など)
TP
  1. 医師の指示に基づく確実な補液管理(投与量・速度の管理、刺入部位の観察・固定)
  2. 水分出納バランスの計算
  3. 医師の指示に基づく消化器症状に合わせた食事の提供
  4. 保清の実施、介助(更衣、陰部・臀部の洗浄、入浴)
EP
  1. 母親へ脱水徴候の説明、症状出現時は看護師へ知らせるよう指導
  2. 母親へ経口摂取量を記録するよう指導
  3. 母親へ尿量、尿回数の記録の指導
  4. 母親へ排便回数、便性状の記録の指導

#3 転倒・転落の可能性 の看護計画

看護問題
転倒・転落の可能性
目標
  1. 転倒転落を起こさず、安全な療養生活を送ることができる
  2. 母親が転倒・転落のリスクを理解し、安全な環境を整えられる
OP
  1. バイタルサイン
  2. 発達に応じた活動レベル
  3. ベッド周囲の障害物の有無
  4. 履物、歩行状態
TP
  1. ベッド柵の設置
  2. ベッドの高さの調整
  3. ベッドストッパーの確認
  4. 点滴ルートや心電図のコードを適切に固定・保護する
  5. 必要時、移動の介助
  6. 安全な寝衣、履物の選択
  7. ベッド周囲の環境整備
EP
  1. 母親に児の歩行状態や足のサイズに合わせた履物を用意・使用するよう指導
  2. 母親に児の身体のサイズに合わない寝衣は避けるよう指導
  3. 母親自身のトイレや入浴でベッドを離される時は、児を一人にせず看護師に知らせるよう指導
  4. 母親に点滴などの固定が緩い時や外れた場合はすぐに看護師へ知らせるよう指導
  5. 母親に移動に介助が必要な時は看護師へ知らせるよう指導

#5 入院や患児の状態変化による母親の不安 の看護計画

看護問題
突然の入院やAちゃんの急激な状態の変化による母親の不安
目標
  1. 母親が不安を表出できる
  2. 母親がAちゃんの病気や治療に対する理解を深め不安が軽減できる
  3. 母親が適切なサポートを受け、心理的・身体的負担を軽減できる
OP
  1. 母親の言動、行動、表情
  2. 家族や周囲のサポート体制の状況
  3. 母親の睡眠、食事摂取状況、疲労の有無・程度
  4. 母親のストレスに伴う身体症状の有無
TP
  1. 児の病状や治療内容について母親の理解度に合わせたわかりやすい説明を行う
  2. 不明点や疑問がないか確認し質問がある場合は丁寧に返答する
  3. 必要に応じてパンフレットや資料を活用しながら説明する
  4. 不安や心配事を表出しやすい環境づくりをする
  5. 母親が休息時間を確保できるようケアの調整をする
  6. 家族や周囲の協力を得て母親の負担が軽減できるよう調整する
EP
  1. 治療に起こりうる症状や今後の見通しを事前に伝え母親の対応力を高める
  2. 母親が孤立しないよう地域の支援団体や病院内の活用できる支援を紹介する
  3. 家族や親族、友人への相談や協力依頼の重要性を指導する
  4. ストレスケアについて指導(リラクゼーション方法、簡単なストレッチなど)

実習でも、患児とその家族の状態を理解し、子どもの成長発達段階に合わせた看護過程を考えてみてくださいね。

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