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実習で指摘された!看護過程における「個別性」とは?

看護実習
更新日 公開日

看護実習で看護計画を発表したときに、実習指導者や学校の先生から「個別性が足りない」と指摘されたことはないでしょうか。看護過程においてどのようにして個別性を出すのか、共通する看護問題を抱えた2人の患者さまの事例を交えてわかりやすく解説します。

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看護実習で耳にする個別性とは?

看護実習中、様々な場面でとにかく出てくる「個別性」という言葉。何となく言葉の意味は分かるけれど、看護計画に個別性を足すにはどうすれば良いのか?と悩む看護学生は多いです。

個別性とは、わかりやすく説明すると「その人らしさ」です。特性、個性と言い換えることもできるでしょう。

ここでは、看護実習における「個別性」について具体的な事例をもとに、個別性のある看護計画の立て方について説明します。

看護計画における個別性の大切さ

そもそも、個別性のない看護計画とはどのようなものでしょうか。
それは、看護問題に対するケアが一般的な内容にとどまっており、読んでいても患者さまの人物像が見えてこない看護計画のことです。学校や実習指導の場では、よく「教科書的な看護計画」などと表現されることがあります。

では、なぜ個別性がなければいけないのでしょうか?それは、個別性のない看護計画は、目の前の患者さまには合わない可能性があるからです。

看護計画に個別性が入るということは、その患者さまの特性や個性に寄り添いながら看護計画を立てるということです。そうすることで、看護計画が「その人のための」計画になります。

ここで大切なのは、同じ看護問題であっても、個別性によって看護介入の方法や内容が大きく変わってくるということです。具体的な例を挙げて、それぞれの個別性の違いを見てみましょう。

個別性がある看護の具体例

58歳男性、Ⅱ型糖尿病でインスリン療法を行うことになった2人の患者さまの事例をもとに、個別性のある看護計画について考えてみましょう。

この事例の看護介入のポイントとして、

  • 疾患と治療に対する理解の促し
  • 食生活、生活習慣の改善
  • インスリンの手技の獲得

これらの部分に着目して、看護計画を立てていきます。

<事例①Aさんの場合>

Aさんは高校教師です。これまでに大きな病気をすることもなく健康には自信がありましたが、以前より肥満傾向でした。独居であり、仕事が忙しいことから外食が多く、毎日の飲酒が習慣でした。
職場の健康診断でメタボリックシンドロームを指摘されていましたが、自分は健康だと考えていたAさんは特に気にとめずに過ごしていました。

しかし最近になり、疲れやすさやのどの渇きを自覚し始めたことから病院を受診したところⅡ型糖尿病を指摘され、内服加療が開始しました。その後、インスリン療法を始めることとなりました。

看護問題非効果的健康自主管理
看護目標
  • 糖尿病の治療と生活習慣の改善の必要性を理解できる
  • インスリンの手技を獲得し、見守りのもとで実施できる
看護計画(OP)
  • 外食の内容、量、時間
  • 疾患の受け止め方
  • 食事、運動習慣の改善に対する意欲
  • インスリンの手技についての理解度
看護計画(TP)
  • 患者とともに目標設定を行う
  • 現在の食事内容を書き出し、改善点をともに考える
  • 職場でのインスリンの使用方法についてともに考える
看護計画(EP)
  • 食事を選ぶ際のポイントについて説明する
  • 通勤中などに取り入れられる運動習慣を提案する
  • インスリンを使用する際の注意点や作用について、図や写真を用いて視覚的に説明する

<事例②Bさんの場合>

Bさんは、妻と二人暮らしで生活しています。以前より高血圧、高脂血症を指摘されており、内服加療を行っていました。
真面目な性格で、以前は工場に勤務していましたが、3年前に交通事故で右上肢を負傷してから手先を使う業務が困難となり退職し、現在は家事や身の回りの世話は妻が主に行っています。

定期受診の際にⅡ型糖尿病を指摘され、それから運動習慣をつけるため2人で毎日ウォーキングをしていました。その後も通院を続けていましたが、今回インスリン療法が開始となりました。

看護問題非効果的健康自主管理
看護目標糖尿病のコントロールに向けた生活習慣の改善方法とインスリンの手技を、本人と妻が理解できる
看護計画(OP)
  • 食事内容を妻とともに確認する
  • 現在の内服管理状況
  • 妻のインスリンの手技獲得の程度
看護計画(TP)
  • 家庭の食事でどのような部分が改善できるか患者、妻と考える
  • 現在の運動習慣の継続方法を考える
看護計画(EP)
  • 家庭での食事療法について説明する
  • 患者、妻の理解度に合わせながらインスリンの手技の説明をする

大まかな内容ですが、それぞれの患者さまの個別性による看護介入の違いが分かるでしょうか。
指導という介入一つにおいても、事例①の場合は、患者さま本人への理解の促しや手技の獲得、そして社会生活との両立という部分が重要であることに対し、事例②では患者さま本人だけでなく、家族への指導が重要であることが分かると思います。

その背景となっているのは、患者さまの健康意識や管理能力、身体状況、社会的役割、サポートの有無…といった、さまざまな個々の特性です。
そうです、それこそが「個別性」なのです。

事例を読んでいると、生活背景や性格など、何となくその患者さまの人物像が見えてきませんか?それを看護計画に反映させることが「個別性を入れる」という作業になります。

看護過程に個別性を出すポイント

ここで一つ、看護計画の例を紹介します。この看護計画に個別性を出すには、どのような要素を入れることが必要でしょうか?下記のポイントを参考に、個別性のある看護計画を考えてみましょう。

<事例③乳がんで右乳房全摘出術を予定している40歳女性>

看護問題乳房全摘によるボディイメージの混乱
看護目標術後に生じるボディイメージの変容を受け入れる準備ができる
看護計画(OP)
  • 疾患や手術に対する受け止め方
  • 術後の身体の状態に関する理解度
  • 術後の生活環境、サポートの有無
看護計画(TP)
  • 患者の思いを表出できる環境を整える
  • 患者の心情を理解し、支援する
看護計画(EP)
  • 術後に使用できる補正用具について説明する
  • 患者会など、他の患者と話すことのできる機会を紹介する

個別性を出すためのポイント

  • 社会的役割を明らかにする
  • 日常生活について考える
  • 患者本人の思いや発言から精神的側面を理解する
  • サポート状況について知る
  • 計画に具体性をもたせる

これらのことを意識して、先ほどの看護計画に個別性を入れることで、患者さまの思いや優先して介入すべきことが分かる、具体的な看護計画になります。

<事例③に個別性を入れたもの>

看護問題乳房全摘によるボディイメージの混乱
看護目標術後に生じるボディイメージの変容を受け入れる準備ができる
看護計画(OP)
  • 疾患や手術に対する受け止め方
  • 術後のボディイメージの変化に関する、夫と10歳の子供の理解度
  • 職場における、疾患のことを理解してくれる人の有無
看護計画(TP)
  • 面会時は患者と家族だけで過ごせる空間をつくり、患者の思いを表出できる環境を整える
  • 子供への説明の方法について、ともに考える
看護計画(EP)
  • 外見の変化が一番気になるという発言があるため、術後に使用できる補正用具と、乳房再建についての情報提供を行う
  • 術後、ボディイメージの変容に対する本人の受け入れが進んだ段階で、患者会など、他の患者と話すことのできる機会を紹介する

ポイントを意識したことで、その人らしさが反映された、個別性がある看護計画ができたのではないでしょうか。
実習でも、受け持ち患者さまの生活背景や性格などの人物像を理解し、個別性のある看護計画を考えてみてくださいね。

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