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事例あり!母性看護過程の書き方【ウェルネス型 看護診断・看護計画編】

看護実習
公開日

母性看護は、健康な人を対象とする場合が多く、対象者の健康の維持・増進、あるいは疾病の予防を目的としている点が大きな特徴です。そのため、無理に問題を提起する問題解決パターンではなく、ウェルネスの視点に基づいた看護診断を導入することで、無理なく対象の特徴を捉えたケアの看護過程が書きやすくなります。
母性看護はウェルネスの視点になるので、「看護問題」ではなく「看護診断」となります。

今回は、正常な妊娠経過をたどり自然分娩となった初産婦の看護過程の書き方を、ウェルネス看護診断に基づき、看護診断・看護計画を中心に説明します。ウェルネスの視点の理解を深め、対象者に元来備わっている力を、最大限に引き出すことができるケアの実践を行っていきましょう。

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産褥期のウェルネス型 看護診断の見つけ方

産褥期のウェルネス型看護診断の見つけ方で重要なのは、問題解決パターン型のような病気の治療や症状の管理だけでなく、母親や新生児の健康状態を維持・増進するための視点です。対象である母親や新生児が今どのような状態にあるか、あるいはどういう方向に進もうとしているかに焦点を当て、より良い方向へ向かえるよう支援します。

ウェルネスの看護診断の特徴は、以下の3つです。

  • ありのままの状態を診断する
  • その人の強みとなっているところを診断する
  • ポジティブな視点で診断する

看護診断の優先順位の付け方

看護診断における優先順位の付け方は、一般的にマズローの基本的欲求段階説に基づきます。 一次的欲求は身体の安全性につながる段階であり、二次的欲求よりも優先してください。医師との共同問題の診断がある場合は、生命に関わるため最優先です。
つまり、「産褥期の子宮復古不全」の方が、「育児不安」などの心理的問題よりも優先されることになります。しかし、心理面が身体面や、育児行動に大きく影響していると考えられる場合には、心理状態に関連した看護診断を優先することもあります。

ウェルネス型 看護診断の具体例

アセスメント編の「実習でよく受け持つ事例」をもとに、ウェルネス型 看護診断の具体例を挙げていきます。

褥婦の看護診断

♯1 母乳育児に関する知識と技術の習得が始まっている
♯2 退行性変化を妨げるリスクを軽減するための行動がとれている
♯3 理想の母親像と現実の自分との統合を始めている
♯4 家族関係・機能の再調整が進んでいる
♯5 退院後の育児環境を整え始めている

新生児の看護診断

♯1 子宮外生活のへ適応は順調である
♯2 子宮内の発育は良好である
♯3 成長・発達を促進する栄養・養護を受けている
♯4 家族の一員として受け入れられている
♯5 成長・発達を促進する生活環境である

事例あり!母性看護過程の書き方【アセスメント編】~ウェルネスの視点はなぜ大切?~

ウェルネスの視点を取り入れた産褥期の看護計画の書き方

退行性変化について

生殖器復古

子宮やそのほか肛門部、外陰部などの生殖器の復古の到着目標は、子宮が妊娠前の大きさに戻り、創傷が治癒することです。その目標に向かって日々変化していく経過において、今がどの状態にあるかをアセスメントします。
子宮底の高さや悪露の色・量の変化は、標準的な経過と比較してどう変化しているか判断してみましょう。

全身状態の回復

全身の回復状態が産褥日数に応じて順調かを、産褥期の生理的変化と照らし合わせてアセスメントします。具体的には、妊娠期に増加した循環血液量が元の状態に戻る過程において血液所見が変化したり、尿量が増加したりします。

セルフケア行動

生殖器の復古を促進させるためには、褥婦自身が身体の回復や復古を促す方法を理解し、実行できることが大切です。褥婦自身が自分の身体の変化を理解し、復古を促進するための行動がとれているかをアセスメントしましょう。

進行性変化について

乳房の状態

産褥期の乳房の状態は乳汁の産生と分泌で判断しますが、それらの機能は分娩後から徐々に働くため、産褥早期の変化は緩徐です。標準的な経過と比較して、進行性変化はどう経過しているか判断してみましょう。

授乳状況

母乳育児の確立は、以下のようなさまざまな因子が影響しています。

  • 母体の回復状態
  • 心理状態
  • 母乳育児への意欲
  • 新生児の全身状態
  • 乳房管理状態
  • 授乳状況
  • 育児経験

初産婦の場合は初めての育児経験であり、知識と技術を獲得していくスタート地点にいるため、産褥早期の段階で、母乳育児がうまくできなくてもそれは当然であるという視点でケアに取り組みます。

心理・適応過程

産後の心理状態

産後の母親は、母親としての理想像と、実行したくてもできないという現実の自分との落差から葛藤が生じやすくなります。しかしそういった葛藤は、目標に向かって行動していく意思があるということの表れと捉えることができます。経験を積み重ねることで、育児技術の習得は進むため、母親としての自己を受け入れられるようになると考えられます。

母親への適応過程

母親役割の取得は、夫や家族から受け入れられ、母親としての自己受容、新生児の愛着形成・受容が順調に経過することが基本です。とくに初産婦の場合、技術の習得などが困難であっても、新生児の受容が良好であれば経験を積み重ねることで技術の習得も進み、母親役割の取得は順調に経過すると判断できます。

家族・適応過程

父親への適応過程

父親としての役割取得は、新生児に対する受容や愛着が重要です。妊娠・出産への喜びの表出や、育児行動に対する学習の必要性を感じているか、取り組んでいるかがポイントになります。

家族の適応過程

祖父母や上の子どもなど、他の家族は新生児に対してどのように関わっているかを観察し、家族の一員として受け入れようとしているかを判断します。

生活・社会環境

新しい役割を担う母親が、現在の生活状況の維持や向上のために行動できるセルフケア能力があるか、退院後のサポート体制や環境の整備、社会資源の活用ができているかなどを把握し判断します。母親本人が退院後の生活に目を向けられているのかも重要な視点です。

看護計画の具体例(褥婦・新生児)

褥婦の看護計画と、新生児の看護計画の具体例をご紹介します。

褥婦の看護計画

褥婦の看護計画の例をみる
看護診断
♯1 母乳育児に関する知識と技術の習得が始まっている
目標
  1. 新生児に乳頭を適切に含ませることができ、浅吸いが改善する
  2. 正しい新生児の抱き方を理解する
  3. 安楽で安定した新生児の抱き方を習得できる
  4. 新生児の反応に対する感情を表出できる
  5. 母乳育児に関する疑問点を質問できる
  6. 母乳育児への自信や満足感など前向きな言葉を表出する
OP
  1. 乳房緊満状態(視診、触診、本人の自覚)
  2. 乳房開通状態(開口数、太さ)
  3. 乳輪部の変化(柔軟性、伸展性)
  4. 授乳後の乳頭の状態(発赤・疼痛・水疱・亀裂の有無)
  5. 授乳時の新生児の抱き方
  6. 乳頭の含ませ方(新生児の開口状態、口唇の状態)
  7. 授乳間隔、授乳時間
  8. 授乳環境
  9. 授乳時の新生児への声かけ
  10. 授乳時の母の表情、反応、感情の表出
  11. 全身の回復状態
  12. 新生児の全身状態、反応、覚醒状態
  13. 乳汁分泌を促進するための行動への理解
  14. 授乳をするタイミングの理解
  15. 母乳育児に対する質問・疑問
  16. 家族の母乳育児への考え
TP
  1. 授乳をする時間を予測し、タイミングを合わせて訪室する
  2. 授乳時の抱き方・乳頭の含ませ方を一緒に行う
  3. 乳頭刺激を促す
  4. 母親の思い・訴えを傾聴する
  5. 看護者へ希望することを聞く
  6. 父親へも母乳育児に関心を向けて母親を支えるよう関わる
EP
  1. 乳汁分泌の変化について説明する
  2. 乳房ケアの方法について説明しながら一緒に行う
  3. 授乳技術は経験を積み重ねることで習得していくことを伝える
  4. 母児双方が初めての体験であることを伝える
  5. 母子同室時に心配なことはいつでも伝えるよう説明する

新生児の看護計画

新生児の看護計画の例をみる
看護診断
♯1 子宮外生活への適応は順調である
目標
  1. 生理的適応が順調に経過する
  2. 体重が増加傾向になる
  3. 母親が新生児の子宮外生活への適応過程を観察できる
  4. 母子同室時に母親が新生児の状態に合わせた環境調整ができる
OP
  1. バイタルサイン
  2. 皮膚の色調・四肢末梢冷感の有無
  3. 黄疸(皮膚黄染の部位、経皮ビリルビン値)
  4. 体重計測値、減少率
  5. 排泄状況(性状、回数、量)
  6. 腹部膨満の有無、程度
  7. 哺乳回数、哺乳力、哺乳量、哺乳意欲
  8. 原始反射、活動性、筋緊張、啼泣の強さ、機嫌、反応
  9. 臍部の状態(乾燥、出血、脱落)
  10. 母親の回復状態(バイタルサイン、顔色、表情、疲労感)
  11. 母親の乳房の状態
  12. 母親の新生児の抱き方、乳頭の含ませ方
  13. 母親の育児知識・技術、態度
  14. 保清の状況(清潔ケア、オムツ交換)
  15. 環境調整(室温、湿度、衣類・掛け物の調整)
TP
  1. 全身の観察(医師の指示に基づいた間隔でのバイタルサインの測定)
  2. 観察は母親と一緒に行い、結果を説明する
  3. 皮膚温、四肢末梢冷感の有無を確認し、必要時は衣類や掛け物で調整する
  4. 異常兆候が見られた場合は、速やかに医師に報告する
  5. 室温、湿度を適切に保つ
  6. 清潔ケア、臍処置、衣類交換を適宜実施する
  7. 適宜訪室し、授乳状況を観察する
EP
  1. 新生児の生理的な変化と観察方法について母親に説明する
  2. 環境調整の必要性、実施方法を説明する
  3. 新生児の欲求に応じて頻回授乳を行うことを推奨する
  4. 母親、希望があれば家族とも一緒に沐浴を実施する

実習でも、受け持ち患者さま(母児両方)の各期の経過や状態を理解し、看護過程を考えてみてくださいね。

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