すぐ使える!看護実習目標案と具体例【老年看護学】~ケース別の実習目標と行動目標~
看護実習目標には、実習全体の目標としての実習目標、毎日の目標としても行動目標の2種類あります。老年看護学で使える実習目標と行動目標の具体例を掲載しているので、看護実習ですぐに使ってみましょう。
実習目標の目標案と具体例
目標案と具体例
ケースと例をセットで記載しているので、自分の実習ケースにあわせて参考にしてみてください。
目標が適用できるケースと例をセットで10本書いてください。
ケース:認知症(アルツハイマー型認知症)
82歳女性。入院により環境が変化し、不穏や見当識障害がみられる。
【実習目標例】
認知症高齢者の加齢変化と認知機能低下の特徴を理解し、安心感を与える関わりを通してその人らしさを尊重した看護を学ぶ
ケース:大腿骨近位部骨折術後
85歳男性。転倒による骨折で手術後、ADLが低下している。
【実習目標例】
高齢者の術後合併症リスクと廃用症候群の予防について理解し、ADL回復を支える看護の役割を学ぶ
ケース:心不全(再入院)
79歳男性。独居。生活管理が不十分で再入院となった。
【実習目標例】
高齢心不全患者の身体状態と生活背景を関連づけて理解し、再発予防に向けた支援の必要性を学ぶ
ケース:脳梗塞後遺症
83歳女性。右片麻痺あり。嚥下機能低下がみられる。
【実習目標例】
身体機能低下が生活へ与える影響を理解し、残存機能を活かした援助について考察する
ケース:COPD(在宅酸素療法導入)
78歳男性。労作時呼吸困難あり。
【実習目標例】
慢性呼吸器疾患を抱える高齢者の生活制限と心理的影響を理解し、セルフケア支援の視点を学ぶ
ケース:誤嚥性肺炎
87歳男性。食事中のむせ込みが頻回。
【実習目標例】
嚥下機能低下の特徴を理解し、安全な食事援助と誤嚥予防の重要性を学ぶ
ケース:うつ症状を伴う高齢者
76歳女性。配偶者死亡後、食欲低下と意欲低下がみられる。
【実習目標例】
高齢者の喪失体験が心理面に及ぼす影響を理解し、精神的支援の在り方を学ぶ
ケース:糖尿病(自己管理困難)
81歳男性。インスリン自己注射の理解が不十分。
【実習目標例】
加齢による認知・身体機能低下を踏まえた自己管理支援の方法を学ぶ
ケース:終末期がん
88歳女性。疼痛コントロール中。
【実習目標例】
終末期高齢者の身体的苦痛と心理的側面を理解し、尊厳を守る看護について学ぶ
ケース:施設入所中の高齢者
90歳女性。家族の面会が少なく社会的孤立がみられる。
【実習目標例】
高齢者の社会的背景が健康に及ぼす影響を理解し、多職種連携の必要性を学ぶ
実習目標を立てるときのポイント
実習目標は、「何を意識して実習に臨むのか」「実習を通してどのような力を身につけたいのか」を明確にするための大切な指標です。
老年看護学実習では、身体的変化だけでなく、心理的・社会的側面を含めて高齢者を総合的に捉える視点が求められます。加齢に伴う身体機能の低下や慢性疾患、生活環境や家族背景など、高齢者を取り巻く状況は一人ひとり異なります。
そのため、対象者を多角的に理解し、その人らしい生活を支える看護を考えることが実習の重要な目的となります。
実習の学びを深めるためには、実習の目的と自分自身の課題を整理し、それらを結びつけた実習目標を立てることが重要です。ここでは、老年看護学実習で実習目標を立てる際に押さえておきたい3つのポイントを解説します。
シラバスや実習要項から、実習の目的と目標を確認する
老年看護学実習では、高齢者の加齢変化を理解し、生活機能の維持・向上を支える看護を学ぶことを目的としています。高齢者の尊厳を尊重した関わりや、多職種と連携しながら支援する視点を身につけることも重要な学習内容となります。
そのため、まずはシラバスや実習要項に記載されている実習の目的や到達目標を確認することが、目標設定の出発点となります。
学校が定める到達目標には、以下の内容が含まれていることが多くあります。これらを確認せずに目標を立ててしまうと、個人の関心だけに偏った目標になり、実習評価とずれてしまう可能性があります。
- 加齢に伴う身体的・心理的変化を理解する
- 高齢者の生活機能を踏まえた看護を実践する
- 尊厳を尊重した関わりを行う
- 多職種連携の役割を理解する
まずは「この実習で何ができるようになることを求められているのか」を理解し、その枠組みに沿って実習目標を設定することが重要です。
自分の課題・実習で学びたいことを確認する
実習目標を具体的にするためには、自分自身の課題や苦手意識を振り返ることが大切です。これまでの講義や実習経験を振り返り、自分がどの部分に不安や課題を感じているのかを整理しておきます。
【自分の弱点(例)】
- 認知症高齢者との関わりが苦手
- 退院支援を学びたい
- 終末期ケアを深めたい
自分の課題を明確にしておくことで、実習中に何を意識して学ぶべきかがはっきりし、より実践的な学びにつながります。
実習目的と自分の課題の共通点を見つける
良い実習目標を立てるためには、実習目的と自分の課題をそれぞれ確認したうえで、両者の共通点を見つけることが大切です。共通点を意識することで、学校が求める学びと、自分自身が克服したい課題の両方を満たす目標になります。
【実習目的】
生活機能の維持を支える看護を学ぶ
【自分の課題】
ADL評価が苦手
この場合の共通点は「ADL評価と生活機能の関連を理解すること」です。このように結びつけることで、実習の目的に沿いながら自分の課題克服にもつながる、評価されやすく成長につながる目標になります。
実習目標の良い例・悪い例
同じテーマであっても、目標の書き方によって実習の質は大きく変わります。
ここでは「誤嚥性肺炎の高齢者理解」という同じ目的で、良い例と悪い例を比較してみましょう。上記3つのポイントを踏まえることで、どこを修正すべきかが見えてきます。
テーマ:誤嚥性肺炎の高齢者理解
【良い例】
嚥下機能の低下と栄養状態を関連づけて観察し、誤嚥を予防するための安全な食事援助の必要性を理解する
【悪い例】
誤嚥性肺炎について学ぶ
良い例のポイント
良い例は誤嚥性肺炎の背景となる嚥下機能の低下や、栄養状態といった観察の視点が具体的に示されています。また、観察を通して安全な食事援助の必要性を理解するという、看護実践につながる学びが明確になっています。
- 観察視点が具体的(嚥下機能・栄養状態)
- 身体機能と生活行為(食事)が関連づいている
- 高齢者看護の特徴を踏まえている
- 達成できたかどうかを評価しやすい表現になっている
悪い例について
悪い例は、「学ぶ」という表現が抽象的であり、何をどのように学ぶのかが明確ではありません。実習中にどのような観察や行動をすればよいのかがイメージしにくく、学びの焦点もぼやけてしまいます。
高齢者の特徴や生活機能の視点が含まれておらず、老年看護学実習としての具体性や評価可能性にも欠けています。
- 表現が抽象的で具体的な行動が見えない
- 対象者の特徴(高齢者)が反映されていない
- 老年看護の視点が不足している
- 達成度を評価する基準が不明確になっている
行動目標の目標案と具体例
「実習初日」の行動目標と具体例
実習初日は、病棟の環境や対象者に慣れながら、患者の全体像を把握することが中心となります。そのため行動目標は、老年看護の特徴を踏まえ、疾患だけでなく生活機能や心理面にも目を向けて情報収集を行うことを意識して設定することが大切です。
ケース:認知症
見当識障害があり、初対面の人に対して不安を示すことがある
【行動目標】1日3回以上穏やかな声掛けを行い、安心できる関係づくりを意識する
ケース:大腿骨頸部骨折(術後)
術後で安静度の制限があり、離床開始前の状態
【行動目標】バイタルサインを正確に測定し、術後の全身状態を把握する
ケース:心不全
心不全の増悪により入院し、体液管理が必要な状態
【行動目標】体重変化と浮腫の有無を観察し、体液貯留の状況を把握する
ケース: 脳梗塞
片麻痺があり、日常生活に介助が必要な状態
【行動目標】食事・移動・更衣などのADL状況を観察する
ケース:COPD
慢性的な呼吸困難があり、酸素療法を行っている
【行動目標】呼吸状態(呼吸数・呼吸様式・SpO₂)を観察し記録する
ケース:誤嚥性肺炎
嚥下機能の低下があり、誤嚥予防が重要な患者
【行動目標】食事場面を見学し、食事姿勢や食事形態を確認する
ケース:うつ症状
意欲低下があり、会話量が少ない
【行動目標】表情や発言内容、反応の様子を観察し記録する
ケース:糖尿病
血糖コントロール目的で入院している
【行動目標】血糖測定の方法と測定タイミングを確認する
ケース:終末期
がん終末期で疼痛コントロールを行っている
【行動目標】疼痛評価の方法や観察ポイントを学ぶ
ケース:施設入所者
施設入所中の高齢者で、日常生活は施設スタッフの支援を受けている
【行動目標】1日の生活リズムや日常生活の過ごし方を把握する
「看護計画を立てる前」の行動目標と具体例
看護計画を立てる前の段階では、対象者の状態を多面的に理解するための情報収集とアセスメントの視点を広げることが重要になります。そのため行動目標は、疾患だけでなく、生活機能・心理面・社会的背景などを意識して患者の全体像を把握することを目的として設定します。
ケース:誤嚥性肺炎
嚥下機能低下があり、食事中にむせ込みがみられる高齢者
【行動目標】食事場面を観察し、食事姿勢・食事形態・むせ込みの有無を把握する
ケース:呼吸困難と浮腫の増悪で入院した高齢患者
【行動目標】体重変化・浮腫・呼吸状態を観察し、体液貯留の状況を把握する
ケース:大腿骨頸部骨折(術後)
術後で離床が開始されたばかりの高齢者
【行動目標】離床時の疼痛の有無と移動動作の状況を観察する
ケース:脳梗塞
片麻痺があり、日常生活に介助が必要な患者
【行動目標】食事・更衣・移動などのADL状況と必要な介助量を把握する
ケース:COPD
慢性的な呼吸困難があり、在宅酸素療法の導入を検討している患者
【行動目標】呼吸状態と活動時の息切れの程度を観察する
ケース:認知症
見当識障害があり、環境の変化に不安を示しやすい患者
【行動目標】患者の表情や反応を観察し、安心できる関わり方を考える
ケース:糖尿病
血糖コントロール不良で入院している患者
【行動目標】食事内容と血糖値の推移を確認する
ケース:うつ症状
意欲低下があり、活動量が少ない高齢者
【行動目標】表情や発言内容、日中の活動状況を観察する
ケース:終末期がん
疼痛コントロールを行いながら療養している患者
【行動目標】疼痛の程度や表情の変化を観察し、苦痛の有無を把握する
ケース:退院支援が必要な高齢者
独居で、退院後の生活に不安を感じている患者
【行動目標】患者の生活背景や退院後の支援の必要性を把握する
「看護計画を立てた後」の行動目標と具体例
ケース:誤嚥性肺炎
嚥下機能低下があり、誤嚥予防が必要な高齢者
【行動目標】食事介助を実施し、食事姿勢やむせ込みの有無を観察する
ケース:心不全
体液管理が必要な心不全患者
【行動目標】毎日の体重測定と浮腫の観察を行い、状態の変化を記録する
ケース:大腿骨頸部骨折(術後)
術後のリハビリが開始されている高齢者
【行動目標】離床介助を行い、移動時の疼痛や安全性を確認する
ケース:脳梗塞
片麻痺があり、ADLの回復を目指している患者
【行動目標】食事や更衣の場面で必要な介助を行い、患者の自立度の変化を観察する
ケース:COPD
ケース:慢性的な呼吸困難があり、呼吸管理が必要な患者
【行動目標】呼吸状態を観察しながら、安楽な体位の調整を行う
ケース:認知症
見当識障害があり、不安が強くなることがある患者
【行動目標】安心できる声かけを行い、患者の反応や表情の変化を観察する
ケース:糖尿病
血糖コントロールのため自己管理支援が必要な患者
【行動目標】血糖測定を実施し、測定結果と食事内容の関係を確認する
ケース:うつ症状
活動量が低下している高齢者
【行動目標】日中の活動を促す関わりを行い、活動量や表情の変化を観察する
ケース:終末期
疼痛コントロールを行っている終末期患者
【行動目標】疼痛の程度を評価し、苦痛緩和のためのケアを実施する
ケース:退院支援
退院後の生活に不安を感じている高齢者
【行動目標】患者の不安や希望を聞き取り、退院後の生活支援について理解を深める
行動目標を立てるときのポイント
実習目標を踏まえる
行動目標は、実習全体で設定した実習目標を達成するための具体的な一歩です。老年看護学実習では高齢者の身体的変化だけでなく、心理面や生活背景、社会的支援などを含めて総合的に理解することが求められます。そのため、「今日は何を意識して関わるのか」を明確にしないと、観察や援助が断片的になりやすくなります。
実習目標を踏まえて行動目標を立てることで、日々の実習が実習全体の学びとつながり、「今行っている関わりが、どのような力につながるのか」を意識しながら行動できるようになります。
例えば、実習目標が「高齢者の生活機能を維持・向上する看護を理解する」であれば、行動目標は「食事・移動などのADL状況を観察する」「活動量と疲労の関係を把握する」といったように、目標の一部を具体的な行動に落とし込むことが重要です。
実習目標と行動目標が一致していると、指導者にも学習意図が伝わりやすく、評価されやすい目標になります。
評価可能な目標にする
行動目標は「頑張ったかどうか」ではなく、達成できたかどうかを振り返れる表現にすることが大切です。「観察する」「理解する」といった言葉だけでは、どこまでできたのかを判断することができません。
評価可能な目標にするためには、以下の視点を意識して目標文を作成します。
【意識するポイント】
- 何を(観察項目・援助内容)
- どの対象に(高齢患者の状態・疾患)
- どの場面で
- どのように(観察・実施・記録・報告)
例えば、「患者の状態を観察する」ではなく、「心不全患者の体重変化と浮腫の有無を観察し、体液貯留の状態を記録・報告する」とすることで、行動内容と評価基準が明確になります。
実習後に「できたこと・できなかったこと」を振り返ることができる目標になっているかどうかが、良い行動目標かどうかの判断ポイントです。
個別性を盛り込む
老年看護学実習では個別性を盛り込むことが特に重要です。高齢者は、同じ疾患であってもADLの状態、認知機能、生活歴、家族状況などによって必要な看護が大きく異なります。そのため、「誰にでも当てはまる目標」ではなく、今、この高齢者に必要な関わりが分かる目標を立てることが求められます。
個別性を盛り込むためには、目標文に以下のような要素を入れると効果的です。
【目標分に入れる要素】
- ADLの状態(自立・一部介助など)
- 認知機能の状態(認知症の有無など)
- 疾患や治療状況
- 不安や意欲などの心理面
- 家族背景や退院後の生活状況
例えば、「食事介助を行う」ではなく、「嚥下機能が低下している誤嚥性肺炎の高齢患者に対し、誤嚥予防を意識した姿勢で食事介助を行う」とすることで、対象と看護の方向性が明確になります。個別性のある行動目標は、観察や援助の質を高めるだけでなく、老年看護学実習らしい高齢者の生活を支える視点の学びにつながります。
行動目標の良い例・悪い例
同じ内容に対して、良い例と悪い版例を掲載しています。ケースごとに確認してみましょう。
ケース:誤嚥性肺炎で入院している高齢患者
【実習目標】
高齢者の嚥下機能低下と生活への影響を理解する
【行動目標:良い例】
食事場面を観察し、食事姿勢やむせ込みの有無、食事形態を確認して記録・報告する」
【行動目標:悪い例】
食事の様子を見る
良い理由
- 観察項目が「食事姿勢」「むせ込み」「食事形態」と具体的に示されており、行動が明確
- 誤嚥性肺炎の高齢者にとって重要な嚥下や食事場面の観察視点が反映されている
- 観察 → 記録 → 報告という看護の基本的な流れが含まれている
- 実習目標である「嚥下機能低下と生活への影響の理解」と直結してい
- 実習終了時に「観察できたか」「記録・報告できたか」という形で達成度を客観的に評価できる
「何を・どの対象に・どのように行うか」が明確な行動目標は、実習中の行動指針となり、学びを深めやすい良い行動目標といえます。
悪い理由
- 「様子を見る」という表現が抽象的で、具体的に何を行うのかが分からない
- 観察項目(食事姿勢・嚥下状態・むせ込みなど)が示されておらず、行動内容が曖昧
- 高齢者の嚥下機能や誤嚥予防という老年看護の視点が反映されていない
- 観察した結果をどうするのか(記録・報告・評価)が含まれておらず、達成度を評価できない
- 実習目標である「嚥下機能低下の理解」とのつながりが弱く、学びの焦点が不明確
抽象的な表現のみの行動目標は、「何を意識して実習に取り組めばよいのか」が分かりにくく、指導者からも評価されにくい目標になりやすくなります。
看護実習目標が必要な理由
看護実習目標は、実習を「ただ経験するだけ」で終わらせず、学びにつなげるための指針です。目標があることで、何を意識して行動するのか、どの視点で患者を捉えるのかが明確になります。
目標を設定しておくと、実習中の経験を振り返りながら学びを整理することができ、実習後の自己評価にも役立ちます。さらに、学生が何を学びたいのかが指導者に伝わりやすくなり、より具体的な助言やフィードバックを受けやすくなります。
行動計画・行動目標の立て方
看護実習の目標設定は、「アセスメント → 計画 → 実施 → 評価」という看護過程の流れで考えることが大切です。実習を通して行動目標を振り返り、必要に応じて修正しながら取り組むことで、学びはより深まります。
老年看護学実習では、高齢者の身体機能だけでなく、生活背景や心理状態、家族関係などを含めて対象を理解する視点が重要になります。そのため、患者の状態や生活状況の変化に応じて、目標を柔軟に見直しながら実習に取り組むことが大切です。
目標設定の考え方をさらに詳しく知りたい方は、以下のサイトも参考にしてください。
