精神科看護で大切なこと~精神科看護における看護師の役割と学び~
精神科看護では、どのようなことが大切なのでしょうか。精神看護学実習を控えている看護学生に向けて、精神科病院の西八王子病院が解説します。精神科ならではの看護師の学びや、新卒で精神科に入職した場合のメリットについても解説していますので、精神科看護に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
目次
精神看護学とは
精神看護学では、患者さまの人権と尊厳を尊重して自立した生活を送れるように、看護を通して支援する方法を学びます。患者さまを尊重しながら自立を支援することは、看護学全般にも通じます。
精神科の看護で大切なこと
一般科では、患者さまが抱える疾患から必要とされる看護を導き出しますが、精神科の場合、患者さまが生きてきた経緯から必要な看護を導き出します。そのため、精神科の看護においては、患者さまの人間像を把握することが大切です。
患者さまがこれまで送ってきた生育歴や現在の生活スタイルなど、さまざまな情報を加味して人間像を把握しながら、患者さまが生活を送る上で困っていることを考え、看護介入していきます。
精神看護学実習で学んでほしいこと
看護学生の方は、看護実習で精神科の病棟に入る機会があります。そこで、実習を通して学び取っていただきたいことが2点あります。
コミュニケーション技術
実習に臨む看護学生に一番学んでほしいことは、コミュニケーション技術です。
症状を見て看護に繋げる一般病院では、業務に追われて患者さまの話を聞く時間が多くは取れません。一方で精神科看護では、患者さまの人物像を把握することが大切ですので、まず患者さまの話をたくさん聞いて情報収集を行います。患者さまと話をする機会が多いため、その分コミュニケーション技術を磨けます。
重症度によっては、言語的コミュニケーションを取りづらい患者さまもいらっしゃいます。妄想によって正しく伝えられない、閉じこもってしまっていてなかなか言葉に出せない、繰り返しずっと同じことばを叫んでいるなど、患者さまによって状態はさまざまです。
しかし、これらも患者さまにとっては大切なコミュニケーションの一環です。
患者さまに心を開いてもらえたり、患者さまから本音をぶつけてもらえるようになるには、適切なコミュニケーションを取って、患者さまとの間に信頼関係を築く必要があります。
看護師の受け答えの他にも、身だしなみや表情も患者さまはよく見ているので、一種のサービス業として、応対の部分を大切にしています。これは精神看護以外の看護にも必要とされることです。
精神看護学実習では、看護師として患者さまと関わることを経験して、そこから患者さまから信頼されるコミュニケーションの取り方を、少しでもいいので学んでいただきたいです。
コミュニケーション技術は看護師に必要な能力ですので、精神看護学実習で身に着けた傾聴力や応対は他科の看護の現場に行っても生きてくるでしょう。
病気のメカニズム
病気が発症するに至るまでには、一連のメカニズムがあります。
患者さまがどのような環境で育ったのか、それによってどのような外的要因が携わり病気が発症したのか、傾聴し、経緯をたどることで、病気のメカニズムについても実習を通して学んでいただきたいです。
精神科看護師とは
精神科看護師とは、患者さまの人物像を多方面から理解できる、人間理解の専門家です。人を包み込むような包容力が求められます。患者さまがいろいろ吐き出していくことを、きちんと受け止められる能力が不可欠です。そして、患者さまから信頼される看護師である必要があります。
西八王子病院で活躍している人
西八王子病院では、技術ばかりに興味を持つのではなく、ゆとりを持って患者さまの話を聞くような、患者さまに興味のある人が活躍しています。
医師の指示の下で、点滴や注射などの処置をすることが苦手でも、患者さまのことが好きで、悩んでいる患者さまといろいろ話をして、手を差し伸べたいと考えている人は精神科看護師に向いています。
不器用であっても、患者さまに対して「好き」という気持ちを持っている人が活躍できる場所が精神科です。
精神科看護師としてのキャリアアップ
日本看護協会の資格としては、認定看護師の資格を取得できます。病院内ではクリニカルラダーでキャリアを磨くことができます。当院では教育体制も整っており、評価基準もしっかりとしています。ぜひ、精神科看護のスペシャリストを目指してください。
新卒で精神科看護師になるメリット
看護に必要なのは、「知識」と「技術」と「心」の三要素です。知識と技術は、一般病院でも磨けますが、心を磨けるのは精神科ならではだと思います。
患者さまの思いをくみ取ること、患者さまの話をゆっくり聞けること、押し付けないような指導・説明、包容力、対応力はすべて精神科で学べる「心」にあたります。
当院では最近、身体と精神の両方を見ることができる看護師の育成をしています。精神科では、患者さまが自分自身の身体症状を表現できない、伝えられないことが多くありますので、フィジカルアセスメント力を身につけることで、患者さまの身体症状の異変に気づける観察力も磨けます。
精神科デイケアの機能
精神科デイケアでは、精神保健福祉士や作業療法士、臨床心理士などの多職種と連携してそれぞれの職種の強みを活かしてケアを行っています。日中は病院にきて日常生活の管理をして、社会生活を送れるようにサポートします。
西八王子病院のデイケアは3つの機能に分かれています。
1つ目の機能は、日常生活をきちんと送れるようになるための生活支援、2つ目の機能は、これから仕事に就きたい方のための就労支援です。就労支援を目的としたデイケア作業では物づくりをメインでプログラムを考えています。
3つ目の機能は、リワーク支援です。リワーク支援では、一度仕事でつまずき、休息が必要になったうつ病の方を対象に、もう一度仕事にもどれるようなプログラムを考えています。
デイケアに朝決まった時間に来てもらい、机に向かい生活リズムを整えていくことで、仕事への復帰を支援します。
精神科デイケアにおける看護師の役割
看護師は、患者さまが今困っていることはないかや、睡眠をとれているか、薬をちゃんと飲んでいるかなどの心身の健康管理と一日の観察を行います。臨床心理士は主にカウンセリングで、作業療法士はモノづくりを一緒に行っています。
精神科デイケア看護師の魅力
患者さまがきちんと社会生活に戻るためのサポートをできるところが、精神科デイケア看護師の一番の魅力です。一般科の看護師は薬や処置、オペで、患者さまを良くしていき、ドクターのサポートをする役目があります。
精神科デイケアは看護師がメインで患者さまに関わり、看護します。傾聴してあげたり、指導的に関わったり、私生活の方向性についてアドバイスをしたり、生きる楽しみを一緒に考えてあげたりすることで、患者さまが自ら前向きになって退院できることが、なによりの喜びとなります。