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成人看護学実習Ⅰ(急性期実習)の事前学習

看護実習
公開日

急性期実習というと、展開が早くてついていけるかが不安、と感じている方も多いのではないでしょうか。変化の大きい時期にある対象を理解するためには、要点をおさえて事前学習をしておくことがとても大切です。ここでは、急性期実習の特徴と事前学習のポイント、実際の実習場面で役立つ資料や持ち物について解説します。

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成人看護学実習Ⅰ(急性期実習)の特徴

急性期実習は、生命の危機的状況における患者さまを主に周手術期を通して理解し、看護上の問題を解決するために必要な看護過程の展開を学ぶことが特徴です。

実際には、術前の患者さまと関わるところから始まり、手術を受け、その後の回復期や日常生活への復帰にかけての経過を日々アセスメントし、看護実践を行います。そのため、変化の大きい時期における対象理解と、今後起こる変化を予測しながら介入を行っていくことが大切です。

また、急性期実習の特徴の一つとして、看護の対象が若年層から老年層といった幅広い年代にわたることが挙げられます。疾患や手術の内容により、術後の経過や回復過程は大きく異なることに加え、患者さまの背景や生活状況もさまざまであるため、展開の早い時期における身体面・精神面・社会面の変化を理解し、個別性に応じた看護介入を考えることが重要です。

実習で指摘された!看護過程における「個別性」とは?

急性期実習前に勉強しておきたいポイント

急性期実習で対象となる患者さまに共通することとして、手術による生体侵襲が起こることが挙げられます。生体侵襲による全身の変化をモデルや指標を活用して理解し、アセスメントに活かすことが大切です。

また、術直後の看護においては、短時間で起こる変化を経時的に観察してアセスメントすることが重要です。そのため、必要なスケールや判断の指標となる基準値を知っておくことが必要となります。

急性期実習で役に立つ資料

フィンクの危機モデル

生命の危機的状況における患者さまへの看護を行う上で、対象にとっての危機の構造を明らかにし、援助者が何をすべきかを考える必要があります。フィンクの危機モデルを応用し、対象の行動を客観的に評価することで、アセスメントや対象の理解につながります。

フィンクの危機モデルをみてみよう

障害受容のプロセスを示したもの。障害の受容に至るまでには4つの段階があり、危機段階に応じた介入が必要とされる。

段階 特徴
①衝撃 ショックを受け、強い不安を感じ、混乱した行動をとる。
②防御的退行 現実逃避、怒りや避難、権威の誇示等で自己を守る時期。 不安は減少し、急性身体状況も回復する。
③承認 逃避しきれずに現実に直面する時期。不安や焦燥感が現れる。
④適応 残存機能の発揮により、自己のアイデンティティを再認識し、 価値観を構築する時期。

ムーアの分類

手術侵襲を受けることによる生体反応を、回復過程を4相に分けて分類したものです。術後の患者さまは急激な生体反応が起こるため、それらが正常であるか異常であるかを判断する上で必要な指標となります。
また、ムーアの分類を活用することで、術後経過において患者さまがどのような段階にあるのかを理解し、必要な観察やアセスメントを行うことが大切です。

ムーアの分類をみてみよう

手術侵襲を受けることにより、身体にはさまざまな生体反応が起こる。ムーアの分類とは、この生体反応について手術侵襲から回復過程を4相に分類したもの。

状態 術後時期 生体反応の特徴
/主な症状
第1相 傷害期 術後48~72時間
  • 神経内分泌系の反応が中心
  • 体温上昇、血糖上昇
  • 循環血液量の不足、頻脈
  • サードスペースへの水分貯留、尿量減少
  • 腸蠕動停止または微弱
  • 疼痛、活動性の低下、無関心
第2相 転換期 術後3日前後に始まり、1~2日間持続する
  • 内分泌反応の正常化
  • 体温、脈拍の正常化
  • 尿量の増加
  • 腸蠕動の回復
第3相 筋力回復期 術後1週間前後から始まり、術後2~5週間持続
  • バイタルサインの安定
  • 活動性の回復
  • 食欲の回復
  • 筋肉量の回復
第4相 脂肪蓄積期 術後2~5ヶ月
  • 脂肪蓄積による体重の増加
  • 体力の回復
  • 月経の再開(女性)

(参考文献)
照林社 プチナース 急性期実習に使える!周術期看護ぜんぶガイド
著:北島 泰子 中島 光浩

ドレーン管理の観察項目

疾患や術式によりさまざまですが、術後はドレーンを使用することが多くあります。ドレーン管理は術後の看護においてとても重要であり、ドレーンの観察方法や注意点は種類によっても異なるため、それぞれの管理方法を理解しておくことが必要です。
また、排液の色や性状についても、見本となるスケールがついている資料があると、実際に観察したものとの比較がしやすく、理解につながります。

心電図

循環器疾患の有無にかかわらず、手術中や術後の全身管理においては心電図をモニタリングする場面が多くあります。術後の観察を行う上で、心電図の読み方や正常波形、異常波形が視覚的に分かるよう、書籍や資料をもとに患者さまの心電図と比較して理解することが大切です。

意識レベルのスケール

術後の全身麻酔の覚醒状況を判断する際や、麻酔による鎮静を行っている場合などに、意識状態を評価する上でスケールを使用します。JCS、GCSなどそれぞれのスケールの判断基準が示されている資料を手元に持っておくことで、実際の患者さまの状態に照らし合わせて評価することができます。

急性期実習に行く前に持ち物をチェック!

血圧計

術後の看護においては頻回にバイタルサイン測定を行います。身体状況の変化や急変時の対応に備えて、いつでも測定できるようにしておくことが大切です。

SpO2モニター

血圧計と同様に、術後は呼吸状態の変動も重要な観察ポイントとなるため、いつでも酸素飽和度を観察できるよう準備しておくことが必要となります。

聴診器

全身状態のアセスメントや合併症の有無を判断する上で、聴診は非常に大切な情報となります。聴診の手技や方法を予習し、適切なフィジカルアセスメントを行うことが大切です。

時計(ナースウォッチ)

バイタルサイン測定の際、呼吸数や脈拍を計測するのに使用します。また、術後は輸液を使用する場合が多く、点滴の滴下確認の際にも時計を使って、秒数あたりの滴下数から滴下速度を調整します。

変化の多い周手術期において、いつから症状が出現したかなどを時刻とともに把握する必要があるため、常に時間を確認できるようにしておくことが必要です。

メモ帳

術後の看護においては頻回にバイタルサインを測定することが必要であり、観察項目も多くあるため、観察した内容や情報をすぐに書き留めておくことが大切です。個人情報保護の観点から、メモを取る際のルールやメモ帳の使用の可否については、学校や病院の規則を確認しましょう。

ポケットサイズの参考書

ドレーンの排液の色や、血液検査のデータの基準値など、実際に見た観察内容やカルテの情報をその場でアセスメントできるようにするために、検査値やスケールが載っているようなものがあると良いです。カードタイプやポケットマニュアルのようなものもあり、ユニフォームのポケットに入れて持ち運びができるものが便利です。

用意しておきたい項目

  • 血液データの検査値
  • バイタルサインの基準値
  • よく使用される薬の作用一覧(診療科により違いがある)
  • ペインスケール
  • 意識レベルのスケール
  • 心電図波形の見かた
  • 清潔ケア、移動介助などの手順
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実習の持ち物と事前学習

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