看護学生・新卒看護師のための就活・奨学金情報サイト
看護学生に役立つ情報を発信するメディア

看護におけるクリティカルシンキングとは?看護実習で役立つ考え方と具体例

看護実習
公開日

看護実習では、患者さまから得た情報をもとに「この患者さまにはどのような看護が必要なのか」を考える場面が多くあります。しかし、集めた情報をそのまま受け取るだけでは、患者さまの状態を十分に捉えられないことがあります。そこで重要になるのが「クリティカルシンキング」です。クリティカルシンキングは、難しい特別な技術ではありません。得られた情報を根拠に照らし合わせ、「本当にそうなのか」「ほかの可能性はないか」と考えることで、より適切な看護につなげるための思考方法です。

看護計画・関連図 無料サンプル見放題

看護におけるクリティカルシンキングとは

看護におけるクリティカルシンキングとは、患者さまから得られた情報をそのまま受け取るのではなく、根拠をもとに吟味し、必要な情報を整理しながら適切な判断につなげる考え方です。 看護では、患者さまの訴え、バイタルサイン、検査データ、生活状況、既往歴、治療内容など、多くの情報を扱います。
「食欲がない」という患者さまの訴えがあった場合、「食事摂取量が少ないから栄養状態が悪い」とすぐに判断するのではなく、なぜ食欲がないのかを考える必要があります。「吐き気はないか」「痛みはないか」「口腔内に問題はないか」「食事形態は患者さまに合っているか」「薬の影響はないか」など、複数の可能性を考えることで、患者さまの状態をより正確に捉えられます。得られた情報に疑問を持ち、根拠を確認しながら考えることがクリティカルシンキングの基本です。

根拠をもとに情報を吟味する考え方

クリティカルシンキングでは、「なんとなくそう思う」のではなく、なぜそう考えたのかを根拠とともに説明できることが重要です。
患者さまの体温が38℃だったとします。「発熱しているから感染症だ」と決めつけるのではなく、術後なのか、呼吸器症状があるのか、創部に発赤や腫脹がないか、検査データに変化がないかなど、関連する情報を確認します。発熱という一つの情報から複数の可能性を考え、それぞれを裏付ける情報があるか確認することで、より適切なアセスメントにつながります。また、教科書に書かれている知識をそのまま患者さまに当てはめるのではなく、「この患者さまの場合にも当てはまるのか」と考えることも大切です。

他者の意見を否定することではない

「クリティカル」という言葉から、「相手の考えを批判すること」とイメージする人もいるかもしれません。しかし、看護におけるクリティカルシンキングは、他者の意見や考えを否定することではありません。
指導者から「この患者さまは転倒リスクが高い」と言われた場合、「そうなのかな」と受け入れるだけでも、「違うと思います」と否定することでもありません。「なぜ転倒リスクが高いと考えられるのか」「患者さまにはどのような危険因子があるのか」と考え、根拠を確認します。そのうえで、自分の考えを加えたり、新しい情報を得たことで考えを修正したりします。クリティカルシンキングとは、相手の意見を尊重しながら、自分自身でも根拠を確認し、よりよい答えを考える姿勢といえます。

看護でクリティカルシンキングが必要な理由

看護では、患者さまの安全を守り、一人ひとりに合った看護を提供するために、状況を適切に判断する必要があります。そのためには、目の前の情報をそのまま受け取るのではなく、「本当にそうなのか」「ほかに考えられることはないか」と考えることが重要です。

思い込みや決めつけを防ぎ、安全な看護を提供するため

患者さまの情報を十分に確認せず、「この患者さまはいつもこうだから」「高齢だから仕方がない」などと決めつけてしまうと、状態の変化を見逃す可能性があります。
「いつも眠そうな患者さまだから」と考えていたところ、実際には意識レベルが低下していたということも考えられます。患者さまの普段の状態を知ることは大切ですが、「いつもの状態」と「今回の変化」を区別して考えることも必要です。クリティカルシンキングによって思い込みを防ぐことは、患者さまの異常の早期発見や安全な看護につながります。

患者さまに合った看護を考えるため

同じ疾患を持つ患者さまであっても、年齢、生活背景、身体状態、治療への理解、価値観などは異なります。糖尿病患者さまへの食事指導を考える場合でも、単に「食事療法が必要」と考えるだけでは十分ではありません。患者さまが普段どのような食生活をしているのか、どのような仕事をしているのか、食事療法についてどの程度理解しているのかなどを確認する必要があります。得られた情報をもとに考えることで、その患者さまにとって実行しやすい看護を検討できます。

状況の変化に応じて適切に判断するため

患者さまの状態は常に一定ではありません。バイタルサインの変化、症状の出現、検査データの変化、治療内容の変更などによって、必要な看護も変わります。
そのため、一度立てたアセスメントや看護計画を「これで決まった」と考えるのではなく、新しい情報が得られたら再評価することが重要です。クリティカルシンキングは、変化する患者さまの状態に合わせて、考えを修正していくためにも必要な思考方法です。

クリティカルシンキングと看護過程の関係

クリティカルシンキングは、看護過程の一部分だけで使うものではありません。情報収集、アセスメント、看護問題の明確化、看護計画、実施、評価という看護過程のさまざまな場面で活用できます。

情報収集とアセスメントで活用する

情報収集では、患者さまについてできるだけ多くの情報を集めればよいわけではありません。「この情報は患者さまの状態を判断するために必要なのか」「この情報から何が考えられるのか」と考えながら情報を集めることが重要です。例えば、食事摂取量が減少している患者さまの場合、摂取量だけを見るのではなく、食欲、悪心・嘔吐、疼痛、口腔内の状態、嚥下状態、食事形態、活動量、薬剤などを確認します。そして、得られた情報を関連づけながら、「なぜ食事摂取量が減少しているのか」を考えます。

看護計画の立案・実施・評価で活用する

クリティカルシンキングは、看護計画を立てるときにも必要です。「転倒リスクが高いから環境整備を行う」という計画を立てた場合、「なぜ環境整備が必要なのか」「患者さまのどのような危険因子に対する援助なのか」を考えます。実施後には「援助によって患者さまにどのような変化があったか」「目標は達成できたか」「別の方法のほうがよかったのではないか」と評価します。計画を立てて終わりではなく、実施と評価を通して考え直すこともクリティカルシンキングです。

看護実習でクリティカルシンキングを使う具体的な例題

クリティカルシンキングの具体的な例題をみる

ここからは、看護実習でよくある場面を例に、クリティカルシンキングをどのように使うのか考えてみましょう。

食事摂取量が少ない患者さまの情報を整理する

患者さまの食事摂取量が「5割」と記録されていたとします。このとき、「食事が半分しか食べられていない」と確認するだけで終わらせず、その原因を考えるための情報を集めます。

  • いつから摂取量が減っているのか
  • 以前はどの程度食べていたのか
  • 食欲はあるのか
  • 吐き気や嘔吐はないか
  • 疼痛はないか
  • 嚥下や咀嚼に問題はないか
  • 食事形態は適切か
  • 薬剤の影響はないか
  • 疾患や治療による影響はないか

「5割」という数字だけでは、食事摂取量が減った原因までは分かりません。数字や記録を事実として捉え、その背景にある理由を考えることがポイントです。

複数の可能性を考えて不足情報を確認する

「食欲がない」という訴えがあった場合、原因を一つに決めつけないことが重要です。
疾患による食欲低下だけでなく、疼痛、悪心、便秘、口腔内の問題、精神的な不安、環境の変化なども考えられます。そこで、「ほかに考えられる原因はないか」と視点を広げ、不足している情報を確認します。一つの答えにすぐに決めず、複数の可能性を考えることは、クリティカルシンキングの重要なポイントです。

得られた情報をもとに必要な看護を考える

必要な情報を集めたら、「この患者さまには何が必要なのか」を考えます。
食事摂取量低下の原因が「食事中の疼痛」であると分かった場合、単純に「もっと食べてもらう」と考えるのではなく、疼痛の程度や出現するタイミングを確認し、疼痛緩和や食事時間の調整などを検討します。「原因を考える→必要な情報を集める→看護につなげる」という流れを意識することが大切です。

看護実習でクリティカルシンキングを実践するポイント

事実と解釈を分けて考える

クリティカルシンキングでは、「実際に分かっていること」と「自分が考えたこと」を分けることが重要です。
例えば、次のように整理します。

事実 解釈・考え
体温38.2℃ 発熱している
食事摂取量5割 十分な食事摂取ができていない可能性がある
「食べると気持ち悪い」と発言 悪心が食事摂取量の低下に影響している可能性がある

「食事が十分にとれない=栄養状態が悪い」とすぐに結論づけるのではなく、事実を確認してから解釈につなげることが大切です。

判断した根拠を説明できるようにする

実習では、指導者から「なぜそう考えたの?」と質問されることがあります。
このとき、「なんとなく」ではなく、「○○という情報があり、△△の可能性が考えられるためです」と説明できるようにしましょう。
根拠を説明するためには、疾患や治療に関する知識だけでなく、患者さまから得た具体的な情報を関連づけることが重要です。

振り返りや意見交換を次の学びにつなげる

実習では、自分の考えと指導者や看護師の考えが異なることもあります。
そのとき、「自分が間違っていた」とだけ考えるのではなく、「なぜそのような考え方をするのか」「自分にはどの情報が不足していたのか」と振り返ってみましょう。
他者の意見を聞くことは、自分にはなかった視点を知る機会になります。「違う意見=間違い」ではなく、考えを深めるための材料として活用することが大切です。

看護実習でクリティカルシンキングを活かすために

クリティカルシンキングは、実習中に突然身につくものではありません。日頃から「なぜ?」と考える習慣をつけることで、少しずつ身につけることができます。

完璧な答えを求めるのではなく、根拠を考える

実習では、「正解を言わなければいけない」と考えてしまうことがあります。しかし、看護では患者さまの状態によって必要な援助が変わるため、最初から一つの完璧な答えが決まっているとは限りません。
大切なのは、「なぜそう考えたのか」を説明できることです。自分の考えに不足している情報があれば、それを明らかにして追加で確認することも立派なクリティカルシンキングです。

「なぜ?」を繰り返しながら患者さまを理解する

「血圧が高い」「食事量が少ない」「眠れていない」など、患者さまの状態を表す情報を見つけたら、「なぜ?」と一歩掘り下げてみましょう。「なぜ血圧が高いのか」「なぜ食事量が少ないのか」「なぜ眠れていないのか」そして、考えた理由を裏付ける情報があるか確認します。この積み重ねが、患者さまをより深く理解することにつながります。

実習記録やカンファレンスで思考を言語化する

自分が何を考えているのかを言葉にすることも、クリティカルシンキングを身につけるうえで役立ちます。実習記録では、「○○だから△△と考えた」と根拠を意識して書いてみましょう。カンファレンスでは、他の学生の意見を聞き、「自分にはなかった視点はないか」と考えてみることも大切です。最初から完璧に考えられなくても構いません。「事実を確認する→なぜ?と考える→根拠を確認する→複数の可能性を考える→必要な看護につなげる」。この流れを繰り返すことで、少しずつ考える力が身についていきます。

クリティカルシンキングは、患者さまを否定的に見るためのものでも、正解を探し当てるためのものでもありません。患者さまの情報を丁寧に受け取り、根拠をもとに考え、自分の考えを必要に応じて修正しながら、よりよい看護につなげていくための思考方法です。実習で「なぜ?」を一つずつ積み重ねることが、患者さまを深く理解し、安全で個別性のある看護を考える力につながります。

この記事をシェアする