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看護実習学びレポートの書き方「老年看護学実習」

看護実習
公開日

老年看護学実習では、既往歴や内服薬が多い高齢の患者さまのアセスメントに苦労したのではないでしょうか。
「たくさんアセスメントしたのに内容がまとまらない」「レポートに何を書いたらいいのか悩む」となかなか学びレポートが進まない看護学生も多くいます。
この記事では、実習の振り返りポイントや、レポートのテーマ例・構成例を紹介しています。老年看護学実習の学びレポートを書く参考にしてください。

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老年看護学実習とは?

老年看護学実習は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの高齢者施設で行う実習と、病棟実習があります。

高齢者施設での実習は、地域で暮らす高齢者とその家族を取り巻く環境について理解し、必要な生活支援や援助方法を学びます。主に見学実習ですが、入所者さまに必要な援助や学生レクリエーションを実施することもあります。

病棟実習では、病気とともに生きる高齢者を総合的に理解し、健康回復を促進するために必要な看護を学びます。患者さまを1名受け持ち、看護過程を展開しますが、実習先の病棟によって、急性期から慢性期までのさまざまな疾患の患者さまを受け持ちます。

いずれも65歳以上の高齢者を対象とし、生きてきた過程や大切にしている価値観や信念の理解や、加齢による心身の変化を理解することが重要です。

老年看護学実習で学ぶこと

老年看護では、高齢者が病気とともにその人らしく生活できるように支援します。高齢者を身体的、精神的に理解し尊重した看護を提供することが大切です。施設と病棟ともに、認知症を患う方が多いため、認知症看護の理解も重要です。
施設実習と病棟実習に分けて、学ぶことをお伝えします。

高齢者施設実習で学ぶこと

高齢者施設では、急性期や重症度の高い病態ではないものの、多くの既往歴を抱えた慢性期疾患を持つ入所者さまが生活しています。介護予防やQOLの向上を考えた看護の提供が求められます。

高齢者施設実習で学べる内容は、以下になります。

  • 高齢者の身体・精神・社会的特徴
  • 施設で生活する高齢者の日常生活援助やリハビリなどのケアの実際
  • 施設で生活する入所者さまの思いと家族の思い
  • なぜ施設で生活しているのか、家族関係などの背景
  • 認知症患者さまとの関わり方
  • 施設において提供される医療・介護サービス
  • 施設における看護師の役割

高齢者施設は医療を提供する場ではなく、生活の場です。治療を優先する病院とは異なり、生活を支える看護を学ぶことができます。
自宅で生活したい高齢者と、仕事により介護ができない家族の実際や、入所希望者は多いが施設運営費が足りない現状など、高齢社会の問題について学びを深めましょう。

老年看護学の病棟実習で学ぶこと

近年では高齢化に伴い、急性期看護実習でも高齢の患者さまを受け持つことが多くなりました。

老年看護の学習であっても、急性期・慢性期・終末期など疾患や重症度はさまざまであるため、病態に応じて加齢と関連付けて多くのことを学習します。

病棟実習で学べる内容は、以下になります。

  • 患者さまの身体・精神・社会的特徴
  • 患者さまの尊厳と権利を尊重した援助
  • 現病歴と多くの既往歴、加齢による影響についてのアセスメント
  • 患者さまとのコミュニケーション
  • 病気とともに生活することへの患者さまの思い
  • 加齢による機能低下や障害に対する日常生活援助の看護技術
  • 自立度の維持と、自発性を促す看護
  • 認知症患者さまとの関わり方

高齢の患者さまは、高血圧・糖尿病・心疾患などの慢性疾患を多数抱えており、多くの内服薬を服用しています。多くの疾患や加齢の影響を受け、看護問題も複数あり、優先順位の決定が難しい場合もあります。
退職や家族構成の変化により、社会との関わりが減少し孤立を感じやすい点も特徴の一つです。

加齢による身体機能や認知機能の低下、複数の慢性疾患などの高齢者の特徴を理解し、残存機能を生かした援助を心掛けましょう。

老年看護学実習の学びレポートのポイント

老年看護学実習では、複数の病気や高齢者の特徴など、全体像の把握や統合的なアセスメントが大変だったのではないでしょうか。レポートを書く上で、高齢者の特徴の理解と、尊重する対応が大切になります。

施設実習と病棟実習のそれぞれに分けて、レポートのテーマ例や内容のポイントをお伝えしますので、参考にしてみてください。

老年看護学実習を振り返ろう

施設実習と病棟実習において、振り返るべき重要な点を紹介します。施設や病院における高齢者の生活の実際や、印象に残っている反応、提供した看護、看護師のアドバイスなどを整理しましょう。

高齢者の特徴の理解

加齢は身体や精神にさまざまな影響を与えますが、機能低下の程度には個人差があります。高齢者は、エリクソンの発達段階において成熟期にあたり、統合性・絶望の時期です。
関わった患者さまや入所者さまはどうであったか振り返り、加齢による身体的・精神的特徴を整理しましょう。

身体的機能の変化
  • 頭髪の脱落と白髪化
  • 歯牙の脱落
  • 皮膚の菲薄化・しわ・乾燥・弾力性の低下
  • 体温調節機能の低下
  • 脳の重量と容積の減少
  • 基礎体力の低下
  • 筋力低下
  • 知覚機能の低下
    (視力・聴力・臭覚・味覚・振動覚・触覚・痛覚の低下)
  • 心・血管系の老化:
    心拍出量の減少、動悸・息切れを起こしやすい
  • 呼吸機能の老化:
    肺の萎縮と弾力性低下、肺活量・全肺気量・
    分時最大換気量の減少、効率の悪い呼吸になる
  • 消化器系の老化:
    咀嚼と嚥下機能の低下により誤嚥のリスク上昇、
    唾液分泌の減少・消化酵素の減少により消化機能低下、
    腸間運動機能の低下により、便秘傾向になる
  • 糸球体の濾過・排泄作用の低下
  • 中途覚醒、早期覚醒
精神的機能の変化
  • 記憶力・分析力・学習力・判断力の低下
  • 環境の変化に不適応
  • 強い不安が身体的疾患に置きかえられる:
    身体的訴えが多くなるなどの心気状態
  • 無気力・不安・孤独を感じやすい
  • 老いを受け入れられない
  • 人生経験により価値観や考え方が人によってさまざま
  • 頑固・わがまま、保守性、愚痴っぽい、思いやりがあるなど

上記の特徴から、高齢者は複数の疾患を抱えており、症状は人によってさまざまです。身体疾患に伴いうつ病や認知症の悪化などの、精神症状が発現しやすい特徴もあります。

薬物の副作用や合併症が発現しやすい点に注意が必要です。老年看護学実習の実習目標には、「高齢者の特徴の理解」が挙げられていることが多いため、文献を使用しながら高齢者の特徴を記載しましょう。

高齢者とコミュニケーションをとるうえで意識したこと

高齢の方とコミュニケーションをとる時に、どんな態度で何に注意していましたか?

人それぞれの豊かな人生経験から、価値観や考え方に個別性があります。患者さまや入所者さまが大切にしていることを尊重して、医療や看護を提供することが重要です。
病気の治療が必要であっても、長年の習慣をすぐに変えることは難しいでしょう。急な変化を求めず、その人らしく生活できるようにアプローチしましょう。

また、高齢者の自尊心を大切にし、意欲を引き出す声かけが大切です。指導や教育という考えではなく、尊敬の念を持って患者さまや入所者さまの考えを受け入れながら対応しましょう。
傾聴しながら、患者さまや入所者さまのペースに合わせることがポイントです。コミュニケーションで注意していた点や、看護師から助言を受けたエピソードがあれば記載しましょう。

実際に実施した看護

患者さまや入所者さまへのケアで、注意したことはありますか?

さまざまな問題を抱えている患者さまや入所者さまが、その人らしく生活できるように実施したケアや、看護師が行った指導や対応について振り返りましょう。
特に、残存機能の維持や合併症予防の視点は重要です。入院による安静で、認知症の発症や筋力低下によるADL低下や転倒・転落を招く恐れがあります。予防の観点から実施した看護があれば、記載することをおすすめします。

患者さまによっては、転倒・転落、拘縮、褥瘡、嚥下障害、脱水、排泄障害、睡眠障害、せん妄や認知症など、多くの看護問題が挙げられたのではないでしょうか。
看護問題を立案した理由と、優先順位のつけ方について学んだことを記載しましょう。足浴・手浴、口腔ケアなど、どんな個別性に留意して看護を提供したのか、具体的に書くと良いレポートになります。

高齢者とその家族が直面している問題

「退院先が決まらない」「自宅で生活したいけど介護が難しい」など、患者さまや入所者さま、その家族はさまざまな問題に直面しているでしょう。
実習で高齢者本人とご家族が抱える悩みについて触れる機会があれば、具体的な内容や患者さまや入所者さま、家族の思い、対策看護師の対応などを記載しましょう。文献を使用しながら考察すると学びも深まります。

老年看護学実習の学びレポートテーマ例

施設実習と病棟実習に分けて、それぞれの実習のレポートテーマと簡単な構成の例を紹介していきます。実習目標と関連あるテーマかつ、特に深く学んだと感じるテーマを選択しましょう。

学びレポートのテーマ例をみる

施設実習:施設実習で得た学びのレポート

高齢者施設の環境や機能など、病院との違いについて学んだことに触れ、高齢者の生活の実際と求められる看護について学びをまとめましょう。

テーマ例

『高齢者施設における実習の学び』
『高齢者の生活を支える看護』
『施設における看護師の役割』

構成

1.施設実習の学び

(例)施設実習において、高齢者の生活の実際と生活を支える看護の重要性を学んだ。
施設において、入所者は他の入所者とともに日常生活を送っている。食事や入浴、日常の移動といった基本的な日常生活動作において、介護士や看護師の支援を受けて生活していた。入所者が安全で安楽に生活できるよう、その都度個別に寄り添った看護が求められていることを理解した。例えば・・・。

文献や看護研究の結果、学者の理論を使用し、根拠を追加します。高齢者の特徴なども、文献を使用してこの項目に書きましょう。

2.関わった入所者さまや家族の情報とエピソード

年齢、疾患、背景など、入所者さまと家族の紹介をします。見学を行っていて、印象に残るシーンや学びのあった場面を紹介してもいいでしょう。入所者さまと家族の発言や反応、介護士や看護師とのやりとりについて具体的に記載してください。

3.介入した看護と効果・考察

自分が実際に実施したケアや、入所者さまの反応を記載します。コミュニケーションにおいて、高齢者の特徴を考えて配慮した点があれば記載しましょう。
効果のある看護について、文献や看護研究の結果、学者の理論を使用し、根拠を追加しましょう。上手くいかなかったことでも、考察や改善策、看護師からの助言について記載します。

施設実習は見学の時間が多いため、実施したケアがなければ記載がなくても問題ありません。上記の印象に残るシーンや学びのあった場面について、文献を使用して考察しましょう。

4.看護師の役割や看護師から学んだこと

看護師の対応や、看護師から指導を受けた学びについて記載します。テーマに関する学びの重要性を再度明確にしてください。

5.今後の課題

実習での学びを今後の看護にどう活かしていくのか書きましょう。自分が身につけるべきだと感じた知識や技術の獲得のために、どんなことを実施するのか具体的に記載します。

病棟実習:患者さまを受け持つことで得た学びのレポート

受け持った患者さまの情報や、抱えていた問題についてのエピソード、実施した看護について説明しながら学びをまとめましょう。高齢者の特徴やADLの維持、QOLの向上、高齢者を尊重した関わりについて記載することがポイントです。

テーマ例

『高齢者の自発性を促す看護について』
『高齢者の残存能力を活かす看護について』
『高齢者の自尊心を大切にした関わり』
『高齢者の意思を尊重した看護』
『高齢者の特徴を理解した看護の提供』

構成

1.実習の学び

(例)老年看護学実習を通して、高齢者の身体・精神・社会的特徴を理解し、残存機能の維持を目指した看護の提供が重要であると学んだ。
高齢者は加齢によりさまざまな心身の変化を感じるとともに、複数の疾患を抱えている。加齢による機能低下や疾患の症状には個別性があり、患者に応じた健康管理や疾病の予防、心身機能の維持・増進などが重要である。
加齢に伴う高齢者の身体的変化としては・・・・。

文献や看護研究の結果、学者の理論を使用し、根拠を追加します。実習目標である、「高齢者の特徴の理解」について学びを記載し、実習目標を達成していることを明確にしましょう。

2.受け持った患者さまや家族の情報やエピソード

どんな患者さまを受け持ったのか、病名や年齢を始め身体的・精神的・社会的側面から必要な情報を記載してください。高齢者の発達課題についても文献を使用して記載し、実際の患者さまとの比較や考察を記載してください。
患者さまが抱えている問題についての発言や行動があれば、エピソードとして記載しましょう。

3.看護計画の内容や立案理由と、介入した看護と効果・考察

「患者の〇〇の様子や発言を受けて、~~と考察し#1の看護計画を立案した。」のように、立案の理由を述べましょう。実際に看護計画を実施して難しかった点や、実施して良かった点、患者さまの反応を記載し、考察をしてください。
効果のある看護であれば、文献や看護研究の結果、学者の理論を使用し、根拠を追加しましょう。上手くいかなかったことでも、考察や改善策、看護師からの助言について記載します。

4.看護師の役割や看護師から学んだこと

自分には実践できなかった看護師の対応や、看護師から指導を受けた学びについて記載します。テーマに関する学びの重要性を再度明確にしてください。

5.今後の課題

実習での学びを今後の看護にどう活かしていくのか書きましょう。自分が身につけるべきだと感じた知識や技術の獲得のために、どんなことを実施するのか具体的に記載します。

学びレポートの書き方のポイント

学びレポートを書く上でのポイントは以下の5つです。

  1. 実習目標に沿ったレポートテーマを選定する
  2. 読みやすい文章構成にする
  3. 実習における具体的な経験や事例を挙げる
  4. 文献を引用する
  5. 今後の課題や実習での学びの活かし方を明確にする

学びレポートを通して、実習目標の達成を明確にしましょう。例に挙げた構成を意識することで、分かりやすく読みやすい文章になります。

以下の記事では、学びレポートの書き方を詳しく説明しています。レポートの失敗例も紹介しているため、ぜひ参考にして評価される良いレポートを書いてください。

学びレポートの書き方

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