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看護観とは~「私の看護観」の見つけ方~

看護
公開日

看護学生が「私の看護観」を見つける方法や、レポートにまとめるポイントをご説明します。看護師として経験を積んできた著者自身の看護観や考え方を、「私の看護観」を考える際の参考にしてみてください。

看護観とは何か

看護観に似た言葉で、仕事観という表現を耳にしたことがあります。仕事観とは、「自分が仕事に対してどう思うか」という仕事の価値観を意味する言葉として使われているようです。
仕事観の意味をヒントに看護観を捉えると、「自分が看護に対してどう思うか」という看護の価値観を意味することになります。

しかし、臨床が求める看護観と就職活動で求められる看護観は少し意味合いが違ってきます。

OPE

臨床が求める看護観とは、自分が患者にケアするときに体現したい看護を言語化したモノです。つまり看護観とは、どんなことがあってもぶれない「自分が大切にしたい看護や、患者に対して実践したい看護を、自分の言葉で表現したモノ」と捉えることができます。

これから看護師になる看護学生一人ひとりが、患者に対して実践したい看護を言葉で表現できることは、チーム活動で看護を実践する看護師にとってはとても重要なこととなるため、入職時に看護の価値観を聴く機会を持っています。

ICUで教わっている様子

看護の現場では、チームメンバー一人ひとりの看護観を突き合わせて、患者にとって何が「善であるか」を考え看護を展開しています。
しかし、看護の価値観のようにかたちのないモノをどのように表現するかは非常に大変な作業だと思いますので、著者自身の看護観を例に看護観の捉え方について考えていきましょう。

「私の看護観」は十人十色

PICU

著者の看護観は、患者の苦痛を取り除き、希望に沿う日常生活を送ることができるように環境を整える看護を実践することです。

看護観は経験を重ねて変化していくもの

看護学生時代は、看護観を「患者に寄り添うこと」と表現していたかもしれません。看護師になってからは、経験を重ねながら「寄り添うとは何か」について、さまざまな事例でたくさんの看護師と話をしてきました。看護師たちと「患者を尊重することは何か」と意見交換をしていく中で、現在の私が思う看護観は固まってきたように思います。しかし、この看護観は今後の経験によってさらに変化していくものと捉えています。

患者に感謝された経験がヒントに

並木

「私の看護観」の発見は、ケアの対象者に感謝の気持ちを表現されたときに、なぜ感謝されたのかを振り返ることから見えてくると考えています。患者に「ありがとう」と言われるときは、患者を尊重したケアの実践ができたと一定の評価を受けたことになるためです。

看護観の発見に繋がったエピソード

著者の看護観の発見に繋がったエピソードを紹介します。

患者Aさんの吸引をした場面です。日常生活を車椅子で過ごし、気管切開チューブを挿入しているAさんに、吸引を頼まれました。私は「Aさんになるべく苦痛なく吸引できるようにしよう」と考え、吸引の準備をしました。気管切開チューブを挿入している場合、喀痰がどこにたまりやすいかを考え、チューブ挿入の長さに注意を払い吸引を実施しました。

その結果、Aさんより「いままでで一番苦しくなかった」「ありがとう」と言ってもらい、吸引前と同じように車椅子に乗りデイルームへ移動していきました。これは、私にとって「患者の気持ちに寄り添い、苦痛を取り除き、希望に沿う日常生活を送ることができるように環境を整えた看護実践」であったと思っています。

このエピソードは、何度も他者に話をしたことがあります。言語化できることで自分の考えもかたち創られました。

看護学生が「私の看護観」を見つける方法

みなさんは実習に行かれた時、どのような体験をしましたか。そこから振り返ってみるとよいでしょう。

ICU全体

判断が必要な場面で自分は何を尊重するか

調整ボードを確認する様子

実習では「患者は何を望んでいるのか(ニード)」を考慮し、看護計画を立案し目標達成を目指します。例えば、<症状の緩和><ADLの拡大>などの目標が立てられた場合、もう一度患者のニードと照らし合わせズレが無いのか確認していると思います。

そして、<ADLの拡大>の目標達成に向かって計画を遂行するときに、学生である自分が患者に関心を寄せて「患者の表情・姿勢」などに気を払い、その反応を捉えながら、患者を理解しケアを実践していきます。

患者がADL拡大を拒んだ場合は、患者が拒んだ気持ちを尊重するのか、それとも代替案を伝え遂行するのかをアセスメントし、判断することとなります。
判断が必要な場面において、学生である自分がどのような判断でその対処を行い、患者のどのようなことを気遣い配慮するかを言葉で表現する際には、ご自身の価値観が含まれていきます。「私の看護観」が判断基準の1つであると捉えることもできるでしょう。

考えを言語化することで看護観がかたち創られる

病棟の看護師

学生のみなさんは、実習中に行われる教員や学生同士のカンファレンスの際に、自分の考えを言語化する機会を得ることとなり、この機会は看護観の発見の第一歩となります。前述した、ケア時の迷いや、そのケアはなぜ行われたのかについて繰り返し言語化すること、それをメモに残すことでご自身の看護観の発見につながり、かたち創られていきます。

また、カンファレンスでは、自分の看護で大切にしていることに気づけなかったとしても、日常生活を振り返ってみることから発見できるかもしれません。
まずは、看護師になろうと考えた背景はどのようなものか、またはみなさんが日常生活において、友人や家族、地域の方々へどのように気遣いをしているか、例えば「相手の意見を尊重しながら自分の考えを伝える」「家族の身体を気遣う」「恋人のプレゼントを選ぶとき」などは、どのようなことに気遣いをし、思いを馳せ、行動しているのかということも参考になると思います。

このように、自分は他者にどのように関心を寄せているのか、苦痛や苦悩に気づき、その人を尊重するように配慮し行動しているのかについて考えることが、看護観を見つけるヒントになります。これは、自分1人で考えているよりも、同じ学生同士や教員と話すことで言語化でき、文章にするときの手助けになります。

「私の看護観」をレポートにまとめるときのポイント

最後に、看護観についてレポートにまとめるときのポイントをご紹介します。

図書館のデスク

まず初めに、学生同士や教員と対話する中で、看護観を言語化出来たら、その看護観にまつわるエピソードや思ったことを箇条書きで、とにかくたくさん書き出し、内容ごとにまとめます。それを、【起】【承】【転】【結】で文章として仕上げていきます。

レポートの構成

図書館の本棚

【起】

【起】では、「私の看護観」に至るまでの背景を記述します。自分が看護師を職業に選んだ理由を入れながら、「私の看護観」はどのようなものかについて簡単にまとめましょう。

【承】

【承】では、【起】で記述した内容を、具体的なエピソードを交えて展開していきます。実習中のエピソードを簡単に記述するのもよいでしょう。

【転】

【転】では、角度を変えて文章に広がりを持たせることも大事です。「私の看護観」を大切にしたいがそのように振舞えない場面も想像し記述します。そのうえで、「私の看護観」を大事に看護実践するためにどのようにしていきたいかについても記述します。

【結】

【結】では、「私の看護観」をどのように実践していくかについて最終的に宣言するつもりで記述するとよいでしょう。職業として看護師を選択したのですから、看護観を持っているだけではなく、体現するためにどのようにしていくかについても記述しましょう。

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